レモンと枝豆

専門の友達と久々に飲み会

夕方の席も疎らな上り電車に揺られて

ディスコ・ハウスの本にあるゲイ文化とDJについて淫らな内容を読み解いていると

私の向かいの男二人の動きが何やらおかしいことに気づく

ベッキーも目を見張るほどのキーホルダーをじゃらじゃらさせて

手をがっちり絡ませ肩を寄せ合いながらちゃいちゃいしている

珍しいそのふたりは赤羽で降り暗闇に消えてしまった

私は無性に気になるも赤羽を過ぎて蒲田で降りた

オサレな店で幹事と合流し、景気づけに殴られ蹴られおんぶをさせられた

いちおう私は男で幹事は女なのだが、専門学生の頃はこういう痛すぎる思い出しかない

他のクラスからは変態の眼差しで見られる友達が周りを囲み

昼休みのラウンジでは数えられないほど醜態を晒した

誰もいない教室で勝手に髪を切られ見るも無惨な頭にされたこともある

なので飲み屋に入りまったりしてても油断はできない

今はもうすっかり落ち着いた僕の髪形を見つめた友達が

獲物を見つけた目で「切ってやろうか??」としゃしゃり出てくる

案の定だ

そんなやつには容赦なく枝豆を発射してやった

念を押してレモン汁もお見舞いした

そこまで努力しても私の髪を殺めかねないノリをちらつかせている

だとはいえ、みんな社会人になりそんなことできないのは当たり前で

もう髪を勝手に切られるのも公園で怪我をするのも

エロ本の切れ端を家の方々にばら撒かれるのともお別れです

それは結構なことだなと思い安堵の胸をなでおろしひたすら酒を煽った

何一つ危害なく無事に飲み終わり帰宅したのは朝8時

寝る間際のベッドの中でも何より気になっていたのは

飲み屋の店員が珍しい男ふたりの片方だったってことだ

世界は狭い